心の理論と嘘/Theory of Mind & Lying

子どもはどうして嘘をつき始めるのでしょうか? 今日は、子どもたちが嘘をつき始めることと心の理論の関係についてお話したいと思います。 Why do children start to lie?Today, I will talk about how lying relates to their development of theory of mind. 心の理論とは? 心の理論とは、他者は自分とは異なる考えや信念、願い、見解を持っているということを理解する力のことです。 What is Theory of Mind? Theory of mind is the ability to understand that others have thoughts, beliefs, desires, and perspectives that are different from one’s own. 心の理論の発達 心の理論の初期発達(2歳〜3歳) 人は欲しいもの得られればうれしくなり、得られない場合は悲しくなるということを理解。 […]
冗談がわからないお子さんとその主な原因/Common Reasons Kids Don’t Understand Jokes

みなさんの周囲で、冗談が通じにくいお子さんはいませんか?今日は、冗談を理解できないお子さんとその主な原因についてお話したいと思います。Do you have a student who struggles to understand jokes?Today, I would like to talk about common reasons kids don’t understand jokes. お子さんが冗談を理解できない主な理由 ⭐️言語力の低さ ⭐️語彙力不足 ⭐️プラグマティック言語力の弱さ ⭐️文化的違い There are students who struggle to understand jokes. Below are common reasons why students may find it difficult to understand jokes: ⭐️Limited language proficiency ⭐️Low vocabulary knowledge ⭐️Struggles […]
推測力とプラグマティック言語が読解力に及ぼす影響/How Inferential Skills & Pragmatic Language Skills Affect Students’ Reading Comprehension

今日は、推測力とプラグマティック言語が読解力に及ぼす影響についてお話したいと思います。Today, I would like to talk about how inferential skills & pragmatic language skills affect students’ reading comprehension. 推測力/Inferential Skills 推測力とは、文章中の暗黙的・間接的な情報をもとに知識や経験に基づいて推測し、結論を導き、予測する力で、文字通りの意味だけでなく、点と点を結び、情報の隙間を埋め、文章について論理的に考えるのに必要な力です。 【読解力への影響】 結論を導く力 予測する力 原因と結果を理解する力登場人物の特徴、感情、意図を理解する力 Inferential skills involve the ability to make educated guesses, draw conclusions, and make predictions based on implicit or indirect information in the text. These skills go beyond the literal […]
マスクのコミュニケーションの発達に及ぼす影響/Negative Effects of Face Masks on Children’s Communication Development

今日は、マスクが子どもたちのコミュニケーションの発達に及ぼす影響についてお話したいと思います。I would like to talk about the negative effects of face masks on children’s communication development today. 下の2枚の写真を見てください。 Take a look at the pictures below. マスクあり / マスクなしの顔を見て、どの程度正確にその人の気持ちを理解することができるでしょうか?How much information could you get from the faces with/without a face mask to understand her feelings? 長く続いているマスク生活の中で、子どもたちは、表情からその人の気持ちを読み取る練習をする機会を失ってきたのです。Children have missed so many important opportunities to develop their skills […]
ソーシャルフィルター

声に出して言ってもよい言葉と、声に出して言ってしまうと誰かを気づけてしまったり嫌な気持ちにさせてしまう言葉があります。 そういった「言うべき」か「言わざるべき」かを選択することを『ソーシャルフィルター』といい、スムーズな人間関係を築いていくためには重要なソーシャルスキルです。 今日は、ソーシャルスキルカリキュラムである Everyday Speech の中の “Think It or Say It” そして “White Lie” をもとに考案した、ソーシャルフィルターを理解するためのアクティビティをご紹介します。 Think It or Say It? ~こころのなかで vs. こえにだして 家族で友人宅に遊びに行き、友人が作ってくれた食事を口にした子どもが一言… 「これ、おいしくなーい!」 一瞬、場面が凍り付く様子が想像できます。 家庭内での食事場面では許される言動が、他の場面では好まれないことがあります。 このように、状況に応じて「声に出して言っても良い言葉」「心の中で言う(声に出して言わない)言葉」を理解するためのアクティビティがこちらです。 『Think It(こころのなかで) vs. Say It(こえにだして)』 紙に書かれた言葉を見て、その言葉を言う、あるいは聞く場面を想像します。そして、それが、声に出して言っても良い言葉かどうかを考えます。 本当の気持ち vs. 声に出して言う言葉 続いて、本当の気持ちと、誰かを傷つけたり嫌な気持ちにさせないよう、正直な気持ちをそのまま声に出して言うのではなく、別の表現を考える練習をします。 例① 誕生日プレゼントにはレゴセットが欲しいと思っていたケン君。おじいちゃん・おばあちゃんが用意したプレゼントは、色鉛筆。プレゼントの箱を開けてがっかりしたケン君。おじいちゃんとおばあちゃんの気持ちをかんがえると、何といえばよいでしょうか。 例② 最近、視力がおちてきたミキちゃん。ある日、眼鏡をかけてきました。眼鏡をかけたミキちゃんも見て、違和感を感じたアキト君。みんなに何と言われるのか心配しているミキちゃんの気持ちを考えると、何といえばよいでしょうか。 例③ 仲良しのお友だち4人で映画に行こうという話がでました。でも、アキラ君、3人が行きたいと言っている映画は、正直面白くないと思っています。でも、お友だちの気持ちを考えると、「面白くないから行かない!」と言う代わりに、何といえばよいでしょうか。 White Lies vs. Black Lies ~ついてもいいウソ vs. ついたらいけないウソ そして、ついてもいいウソとついたらいけないウソの違い、それぞれのウソが相手に与える影響について、考えます。 […]
身近な「安全」「危険」を理解するアクティビティ

日常生活の中には、様々な危険が存在します。 成長とともにお子さんの行動範囲が広がるにつれて、お子さんが遭遇する危険も増えていきます。 お子さん自身が危険を認識し回避する力をつけることを目的に、先日の個別療育で行った身近な「安全」「危険」を理解するアクティビティをご紹介します。 身近な標識の理解 まずは、身近な標識の意味を理解するアクティビティから。 標識の意味を聞いて、適切な標識を選ぶ練習を行いました。 ちなみにーですが、道路標識に興味のあるお子さんには、ぷりんときっずのサイトからダウンロード可能な道路標識カードや道路標識ポスターもおすすめです! 身近な「安全」と「危険」の理解 身近なモノの中から、 「さわってもだいじょうぶなもの」 vs. 「さわったらいけないもの」 をふるいわけるアクティビティを行いました。 原因と結果 ふるい分けアクティビティの中の「さわったらいけないもの」の中から、「さわったらどうなる?(原因と結果)」のかを理解する練習を行いました。 アイロンをさわったらどうなる?→やけどをする ほうちょうをさわったらどうなる→けがをする 実際に「危険な場面」に遭遇すると、親御さん方は、その焦りから「ダメ―」「あぶない!」と叫んで、お子さんを危険から守ろうとすることと思います。 ただ、お父さんやお母さんの大きな声を聞いたお子さんは、驚きや恐怖のため、危険を理解することができなくなってしまいます。 だからこそ、日常的に、身近な「安全」と「危険」をお子さんがわかるように教えてあげることが大切です。
Whoonu!
アメリカで臨床をしているときのお気に入りのゲーム「Whoonu」をご紹介します。 【遊び方】 「Whoozit」となるプレーヤーを決めます。 残りのプレーヤーは、カードの山から上から4枚ずつカードをとり、手持ちのカードの中から「Whoozit」が好きだと思うカードを1枚(プレーヤーの数が少ない場合は2枚)選び、「Whoonu封筒」に入れます。 「Whoozit」は封筒からカードを取り出し、一番好きではないものから一番好きなものをランク付けし、一番好きではないものには、トークン1を、その次にトークン2を、そして一番好きなものにはトークン6を置きます。 残りのプレーヤーは、自分で選んだカードに応じて、トークンを受け取ります。 「Whoozit」は時計回り(あるいは反時計回り)に交代します。 最後にトークンの合計得点を計算し、得点が一番高い人が「勝ち」となります。 グループ個別療育を行う場合には、仲良くなるきっかけ作りも含めてこのゲームを使用することもありましたが、何より活躍してくれたのが、ソーシャルスキルのグループ個別療育でした。 「順番の理解」「勝敗の理解」「負けを受け止めること」を練習することに加えて、「相手の好きなものを想像する」というゲームの趣旨から「相手の立場に立って考える」練習にもってこいのゲームなのです。 昨夜、なんとなく、わが子たちと一緒にWhoonuをしてみて、その魅力を再確認。 小学生も娘も中学生の息子も、そして大人の私もみんなが楽しめるゲームなのです。 ゲームをした後、ふと、言語聴覚療法でも使いたいな!と思い、その勢いで日本語カードを作っちゃいました! ソーシャルスキル以外にも、言語表現を拡げる練習や、なぞなぞ等のアクティビティを通して、聴理解や質問応答の練習をすることもできます。 小学3年生から始まる英語教育の場面でも使えそうですね! 幅広い目的で活躍できるWhoonu、ぜひお試しください♪
「ダメ!」の代わりに・・・
気に入らないことがあると、大きな声を出す おもちゃを片付けない お友だちが遊んでいたおもちゃをとってしまう お友だちをたたいてしまう などの幼少期の困った行動。 「ダメ!」「やめなさい!」と何度言っても聞いてくれないわが子。 どうしたらよいのでしょうか・・・ というご相談、よくお聞きします。 「ダメ!」 「やめなさい!」 と叱ってしまう気持ち、よ~くわかります。 お父さんもお母さんも叱らずにすむのであれば叱りたくない。 でも実は、叱られているお子さんも、困っていたりするのです。 叱っているお父さんやお母さんだけでなく、お子さんもストレスを感じているなんて、悲しいですよね。 では、どうしたらよいのでしょうか。 「だめ!」「やめなさい!」の代わりに・・・ 「ダメ!」 「やめなさい!」 と叱られていることはわかっても、お子さんは、どうしたらよいのかがわからないことがあります。だから、「ダメ!」「やめなさい!」と言われて、たとえ、その場ではその行動をやめたとしても、また同じことをしてしまうのです。 ーであれば、「どうすればよいのか」を教えてあげればよいのです。 例えば、 「お友だちのおもちゃを取ってしまう」という行動に対し 「こらっ!」と叱るだけでは、また次の機会に他のお友だちのおもちゃをとってしまうかもしれません。 「お友だちのおもちゃが欲しいときは『貸して』って言おうね」 「『一緒に遊ぼう』って言ってみようね」 など、より適切な行動を、お子さんがわかる表現で伝えてあげる方が効果的です。 そして、その指示どおり「貸して」「一緒に遊ぼ」と言えた時は、しっかりほめてあげましょう。 お子さんも、叱られるより褒められる方が、ずっと嬉しいのです。 お父さん・お母さんにもっとかまってほしいお子さんの場合、お父さん・お母さんの注意を惹くために、わざと困った行動をしてしまう場合もあります。 その場合、「ダメ!」「やめなさい!」といった否定的な声かけは逆効果で、困った行動が続いたり悪化してしまいます。 お子さんの良いところを見つけて、できるだけたくさん褒めてあげることが、そうした困った行動を減らしていくことにもつながります。 「ダメ!」「やめなさい!」をやめる ↓ より適切な行動を教えてあげる ↓ しっかりと褒めてあげる お父さん、お母さん、そしてお子さんの笑顔のため、少し遠回りのようですが、がんばっていきましょう。
バリアゲーム
アメリカで言語病理学の大学院生だった頃に出会ったのが「バリアゲーム」 ことばの発達はもちろん、構音やソーシャルスキルの練習など、言語聴覚療法で大活躍の「バリアゲーム」をご紹介します。 バリアゲームとは 1. 場面設定 バリアゲームとは、2人以上で遊ぶゲームで、それぞれのプレイヤーの間に「バリア」となるついたてを置き、他のプレイヤーの手元が見えないように設定します。 すべてのプレイヤーには同じ教材を用意します。 2. 役割 「指示を出す順番」「指示を聞く順番」を決めたらゲーム開始です。 バリアゲームを使ったアクティビティ例 1.位置を表す表現 「犬は木の箱の上に立っています」 「牛を納屋の中に入っています」 「猫がりんごの木の下で寝ています」 など、位置を表す表現を使って言語指示を出したり、指示を聞いて理解する練習をします。 2.語彙 バリアゲームに使用する背景画や絵のピースを個別療育目標に沿って選択することで、お子さんに獲得してほしい語彙の学習をすすめることができます。また、「大きい牛」「小さい羊」などの形容詞や「赤いりんご」「黄色い鳥」などの色名を学習するのにもバリアゲームは適しています。 3.吃音や構音 吃音の「スムーズに話す練習」や構音の「カ行の音を正しく発音する練習」にも効果的です。 練習のことばを繰り返し言うだけのドリルは、子どもたちにとってはとっても退屈。 バリアゲームなどのゲームを使って楽しく練習していくことで、練習が単調ではなくなり、積極的に練習に取り組めるようになります。 4.ソーシャルスキル 指示を出す時は、相手を見る 質問をしたり、質問に答えたりする 指示が分かりにくかった場合は、「もう一度言ってもらう」「わかりやすいように説明してもらう」ようにお願いする 等、ソーシャルスキルの練習目標もこの「バリアゲーム」を通して練習することができます。 バリアゲーム用の教材以外にも、積み木や塗り絵などを使うこともできます。 背景となる絵とその背景画に配置する絵のピースを用意すれば、バリアゲームを手作りすることもできます。 ぜひお試しください。
ことばの発達とお絵かき
子どもが発達する中で、子どもが描く絵も発達していきます。 一見、言語発達とは異なる分野の発達に思える描画スキルですが、実は、言語発達と深い関係があるのです。 今日は、ことばの発達のためにお絵かきが果たす役割について、まとめてみたいと思います。 1.色の認識 クレヨンや色鉛筆、ペンを使ってお絵かきすることで、「様々な色があること」「色と色を組み合わせたら違う色になること」などを体験することができます。そして、そうした体験を通して、色への興味や認識が高まっていき、そこから色名の理解へつながっていきます。 2.想像力&創造力 お絵かきとは、描きたいモノを想像(=イマジネーション)しながら、描画でそれを創造(=クリエイティビティ)してく作業です。 こんな風に線をひいたらどうなるかな? この色の上にこの色を塗ったら、どうなるかな? など、想像力を働かせながら、自分の表現したい絵を創り出していく力は、新しいことを考えて、それを表現する力につながっていきます。 3.自己表現 ことばを使って自分の考えや思いを表現することが得意なお子さんもいますが、描画などの視覚手段を使って自己表現するのが得意なお子さんもいます。得意な回路を使って表現する力を高めてあげることは、心の安定や自信にもつながっていきます。 4.順序の理解や計画性 イメージを絵にあらわしていくためには、描く順序を考え計画していく手順が必要になります。順序の理解や計画する力は、園や学校であった出来事を報告したり、聞いたお話を相手にわかるようにお話する力にもつながっていきます。 5.言語表現 お子さんが描いている途中、あるいは完成した絵について一緒にお話することを通して、非言語的な部分を言語化することになります。その中で、新しい語彙や表現方法を学ぶことができます。 また、色を選んだり描く線や形を考える過程では、どうしてその色・線・形がいいと思うのかといった考えを表現することができますし、描いた後、どう思うか聞いてみることで、気持ちを表現する力を促すこともできます。イメージしたものと描いたものが違った場合は、「思ったのと違うから悲しい/悔しい」といったネガティブな気持ちを表現することで、気持ちを落ち着かせる練習をすることもできます。 絵カードやドリル学習だけが、ことばの発達を促す教材ではありません。 むしろ、生活経験の中からことばを学んでいくことこそ、「生きたことば」「使えることば」の力を育むことにつながるのです。