バリアゲーム
アメリカで言語病理学の大学院生だった頃に出会ったのが「バリアゲーム」 ことばの発達はもちろん、構音やソーシャルスキルの練習など、言語聴覚療法で大活躍の「バリアゲーム」をご紹介します。 バリアゲームとは 1. 場面設定 バリアゲームとは、2人以上で遊ぶゲームで、それぞれのプレイヤーの間に「バリア」となるついたてを置き、他のプレイヤーの手元が見えないように設定します。 すべてのプレイヤーには同じ教材を用意します。 2. 役割 「指示を出す順番」「指示を聞く順番」を決めたらゲーム開始です。 バリアゲームを使ったアクティビティ例 1.位置を表す表現 「犬は木の箱の上に立っています」 「牛を納屋の中に入っています」 「猫がりんごの木の下で寝ています」 など、位置を表す表現を使って言語指示を出したり、指示を聞いて理解する練習をします。 2.語彙 バリアゲームに使用する背景画や絵のピースを個別療育目標に沿って選択することで、お子さんに獲得してほしい語彙の学習をすすめることができます。また、「大きい牛」「小さい羊」などの形容詞や「赤いりんご」「黄色い鳥」などの色名を学習するのにもバリアゲームは適しています。 3.吃音や構音 吃音の「スムーズに話す練習」や構音の「カ行の音を正しく発音する練習」にも効果的です。 練習のことばを繰り返し言うだけのドリルは、子どもたちにとってはとっても退屈。 バリアゲームなどのゲームを使って楽しく練習していくことで、練習が単調ではなくなり、積極的に練習に取り組めるようになります。 4.ソーシャルスキル 指示を出す時は、相手を見る 質問をしたり、質問に答えたりする 指示が分かりにくかった場合は、「もう一度言ってもらう」「わかりやすいように説明してもらう」ようにお願いする 等、ソーシャルスキルの練習目標もこの「バリアゲーム」を通して練習することができます。 バリアゲーム用の教材以外にも、積み木や塗り絵などを使うこともできます。 背景となる絵とその背景画に配置する絵のピースを用意すれば、バリアゲームを手作りすることもできます。 ぜひお試しください。
スムーズに話すコツ
以前、吃音セラピーの『直接法』と『間接法』についてお話しました。 どちらの場合も、できるだけ高頻度で実施することによって、スムーズにお話できる機会を多く持つ、すなわち、成功経験をできるだけたくさん積み重ねていくことが大切です。 セラピーの場面では上手にお話できるようになっても、セラピーの部屋を出たとたん元の状態になってしまうということも少なくありません。 学んだスキルを生活の場面で使えるようになることがセラピーの最終段階であり、その段階こそ、一番大変なステージかもしれません。 ーということで、生活の中で『コツ』を思い出すきっかけにしてほしいという思いで、『スムーズにお話しするコツ』ポスターを作成しました。 こちら→(smooth speech strategies)をクリックしていただければ、TpT Storeより無料でダウンロードできます)。 吃音セラピーの具体的な進め方については、言語聴覚士にご相談くださいね。
吃音セラピー 間接法 vs. 直接法
以前の記事でも吃音についてお話しましたが、今日は、吃音のセラピーについてお話したいと思います。 吃音セラピーは、『間接法』と『直接法』に大別できます。 間接法 間接法とは、吃音症状に関節的にアプローチする方法で、環境調整に働きかけていきます。 環境調整には、以下のような項目が含まれます。 生活のリズムを見直し、ゆったりと過ごせるようにする。特に朝や夕方など忙しくなりがちな時間帯の過ごし方に気をつける。 家族がゆっくり落ち着いたトーンで話す。 お子さんとお話する時は、お子さんが話し終わってから話す(お子さんの話を途中で遮ったり、途中で話題を変えたりしない)。 お子さんと一対一でゆったりと関わる時間を確保する。 兄弟一緒にいる場面で、先を争うように大人に話しかけようとする状況になった場合は、「順番に話す」「1人が話をしている時は、途中で割り込まない」等のルールを決める。 吃音に対してネガティブな思いを持たないようにするため、「落ち着いて話しなさい」と言ったり、お子さんの話し方を否定したりしない。お子さんの話を最後まで聞き、話し終わってから、お子さんの話の内容をまとめてあげたり別の言い方をしながら、(自然な形で)ゆっくりと落ち着いた話し方の見本を見せる。 直接法 お子さんの吃音に直接的に働きかけていく方法です。 例えば 話すスピードのコントロール 早口とゆっくりな話し方を聞き分ける 早口とゆっくりな話し方を使い分ける ゆっくりな話し方を練習する スムーズな話し方(smooth speech)の練習 つまる話し方(bumpy speech)とスムーズな話し方(smooth speech)を聞き分ける。 つまる話し方(bumpy speech)とスムーズな話し方(smooth speech)を使い分ける。 お子さん自身の話し方について、つまる話し方(bumpy speech)かスムーズな話し方(smooth speech)かを特定する。 ここで、スムーズに話すコツも練習します。 Slow Rate:ゆっくり話す。 Light Contact:唇・歯・顎・舌・頰・声帯等、発声に必要な器官の力を抜き、「軽いタッチ」を意識して発声する。 Easy Start:息を吐きながら発声する。 Pausing:単語と単語の間に一呼吸入れながら話す。 *直接法あるいは間接法の選択、また治療法の選択については、お子さん一人一人の様子を見て慎重に選択する必要があります。 吃音に関するご心配がある場合は、言語聴覚士にご相談ください。
吃音
スピーチセラピーが関与する分野は本当に幅広いのですが、その1つの分野が吃音です。 吃音とは、簡単にいうと、言いたいことがあるのにことばがうまく出てこない状態で、ことばの一部を繰り返したり(おおおかあさん)、音を引き伸ばしてしまったり(おーーーかあさん)、あるいは言葉につまってしまう(・・・・・・おかあさん)状態をいいます。 症状が悪化すると、瞬きをしたり、体の一部をピクッと動かしてしまうなどの二次的障害が出てきてしまいます。 アメリカで大学院に通っている頃、吃音の授業の一環として、吃音体験をする、という実習がありました。 課題は以下のとおりです。 「あなたのことをまったく知らない人に、吃音の状態で電話をしなさい(5分以上)。」 そこで、私は旅行会社に日本行きのチケット購入についての問い合わせの電話をしました。 電話口の相手の反応はどうだったでしょうか。 声のトーンから、相手が困っているように思えました。 そして、話すスピードがゆっくりになり、私を子ども扱いしているような口調にさえ感じてしまいました。 そして、私の反応は・・・ そういった相手の反応を感じ、どんどんナーバスになり、一刻も早く電話を切りたい気持ちでいっぱいでした。 たった5分の電話がこんなにも苦痛なものか、と実感した実習でした。 その苦痛を、たった5分ではなく、日常的に感じているとしたらどうでしょう。 本当につらい状況であることが容易に想像できることと思います。 吃音の原因ははっきりしていません。 遺伝・発達的要因・環境・不安などといった本人の心理的要因・・・これらの要因が組み合わさって吃音が生じる、といわれています。 治療としては、本人がつまらずにリラックスしていえることが目標のもと、治療ターゲットを、単語レベルから徐々に長い文章→会話レベルへと発展させていきます。 では、もし子どもの吃音に気づいた時、日常生活の中でできることは何でしょう。 まず、リラックスした口調ではなしかけてあげることが大切です。 また、子どもが何かお話しているときに、横から割って入ったりするのはよくありません。 子どもの話をしっかり聞いてあげましょう。 そして、ついやってしまいがちなのが、子どもの代弁。 子どもがことばにつまると、あるいはつまりそうになると、その子が言おうとしていることを代わりに言ってあげる・・・これは逆効果です。子どもが言おうをしていることを言い終わるまで、待ってあげましょう。 子ども自身がリラックスした状態で話せる − そういった環境作りが大切です。 それでも改善が見られない場合は、症状は悪化する前に言語聴覚士・スピーチパソロジストに相談しましょう。