バイリンガル育児についての話が続いていますが、今日は、言葉に遅れあるいは障害がある場合のバイリンガル育児についてお話したいと思います。

 

前回、バイリンガル環境そのものが言語発達の遅れや言語障害の原因になることはないということをお話しましたが、すでに言葉の発達に遅れがあったり言語障害がある場合はどうでしょうか。

 

いまだに多くの専門家たちが「子どもの負担を減らす」ため「ひとつの言語(多くの場合社会で使われている言語)に限定して育児したほうがよい」というアドバイスをしているということも耳にします。

 

はたしてそうでしょうか。

 

 

この疑問にスバリと答えている記事をみつけたので、ここでご紹介したいと思います。

 

 

ASHA sphereに掲載されているMadalena Cruz-Ferreira博士による『Recommending Monolingualism to Multilinguals – Why, and Why Not』という記事です。

 

 

Madalena Cruz-Ferreira博士がその記事の中で説明している、バイリンガルに関する誤解を以下のように要約してみました。

 

誤解その1:「言語およびその関連領域はひとつの言語内でのみ発達する」 マルチリンガル児は、生活に必要な言語を自然な形で習得する。ひとつの言語で生活のすべてが事足るのであれば、かれらはモノリンガルであるはずである。たとえば、お母さんと話す言葉、お父さんと話す言葉、学校で使う言葉、といったように、マルチリンガル児はそれぞれの言語をそれぞれの必要な場面に応じて、それぞれのペースで習得していき、言語間で習得度に違いがあるのも自然なことである。すなわち、苦手な言語は「言語発達の遅れ」という症状ではない。

 

誤解その2:「複数の言語を使用すると、ひとつひとつの言語は十分に発達しない」 この誤解は、20世紀半ばの「人間の脳はコンピューターのように容量に限りがある」という考え方から発生したものであり、近年の研究による脳の柔軟性・可塑性といった理論とは相反するものである。

 

誤解その3:「ある特定の環境においてある特定の言語を使用することにより、その他の場面でその言語を使う力の発達も促される」 モノリンガル児は、成長とともに、家庭での話し方と学校での話し方を変えるなど、場面や人に応じて適切な話し方をするものである。同様に、マルチリンガル児は、家庭で話す言葉と学校や社会で話す言葉をその目的に応じて使い分けるものである。たとえば、家庭内で使われる話し方や言葉は家庭で使うという目的のもとで発達していくものであり、その文脈内で使うことこそが、その言語の発達を促す方法である。

 

誤解その4:「言語障害の治療はひとつの言語によって行われるのが最も有効である」 子どもの話す言葉とセラピストの話す言葉が異なる場面でよく聞くアドバイスである。そこで疑問に思うのが、本当にモノリンガルが良いと考えて言ったアドバイスなのか、それとも、子どもの話す言語の検査道具やセラピー道具などがないという理由で言ったアドバイスなのか、という点である。どちらにしても、近年の研究により、セラピーは子どもが使用するすべての言語を対象に行われるべきであることは明らかである。

 

 

「そうだそうだ!」と思いながら読み終わり、誰かと共有せずにはいられなくなってしまった(笑)私ですが、みなさんはいかがでしょうか。

 

少々余談ですが、先日、ある日本のテレビ番組の中で、ある専門家の方が「脳の容量には限度があるんです。それを証拠にバイリンガルの人の中で学者など偉くなった人はいないんです」とおっしゃっていたのを聞いて、社会的影響力の大きいテレビ番組内で、そういった誤った情報を堂々と伝えてしまうのはいかがなものなのだろう、と私の頭の中は「」でいっぱいになりました。

 

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話を戻しますが、Madalena Cruz-Ferreira博士は記事の締めくくりとして「マルチイリンガルは障害でもないし障害の原因でもない。障害が疑われるバイリンガル/マルチリンガル児がひとつの言語のみに限定して生活することは、障害の改善にはつながらない。むしろ、障害をもつモノリンガル児にしようとしているだけだ。」と記しています。

 

 

アメリカや他の海外で生活する日本人、日本で生活する外国人、国際結婚カップルの方々。 みなさん、それぞれにさまざまな事情がある中で生活していて、「白か黒か」という話のようにはいかないことだと思います。

 

それでも、もし、選択できる環境であるならば、ぜひ母語育児をがんばっていきましょう!

 

 

追記:表現上わかりにくい部分がありましたので、一部修正を加えました(02.11.2012)。

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