今回は、言語発達につまずきのあるお子さんのバイリンガル育児についてお話したいと思います。
近年、母語による育児の重要性が重視されるようになっています。
これは、言語発達に遅れ・つまずきがあるお子さんについてもいえることで、親の母語で育児することが、言語発達上とても大切なことだと言われています。
言語発達に遅れがない場合でも、2つの言語を学んでいくことは容易ではありません。
それなのに、なぜ
かつては、言葉発達につまずきがある場合、子どもの負担を減らすため、ひとつの言語に限定して養育すべきだという指導が主流でした。
つまり、日本語のみ、あるいは英語のみの環境で子育てをするということです。
そのため、日本語による育児をあきらめ、英語での育児を選んだアメリカ在住の日本人が少なくありません。
しかし、近年の研究によると、バイリンガル環境そのものが言語障害の原因になることはなく、その子のペースで2つの言語を学ぶことができるということがわかっています。
むしろ、親の母語で豊かな親子コミュニケーションをとることが言語発達を促すことにつながるのです。
もう少し、具体的に考えてみましょう。
たとえば、お子さんに絵本を読んであげている場面を想像していただきたいと思います。
絵本を読むとき、通常、書いてある文字を読むだけでなく、絵やそのお話にまつわる経験など、お子さんがわかりやすい口調でいろいろなことを語りかけてあげていることだと思います。
では、母語で絵本を読んでいる場面、第2外国語で絵本を読んであげる場面、どちらの言葉で読んであげている時に、より多くの言葉かけができているでしょうか。
また、どちらのほうが、よりお子さんにわかりやすい口調でお話できているでしょうか
完全なバイリンガルを除いて、多くの方々は、母語で絵本を読んであげるときの方が、お子さんにとってわかりやすい口調でより多くのことを語りかけてあげていることだと思います。
もうお分かりだと思いますが、親にとってもっとも馴染みがあり心を伝えやすい言葉=母語で育児をすることが、子どもの言語発達を促すことにつながるのです。
言葉は文化と密接に結びついていて、人の心情をも表現するものです。
そのため、親子のコミュニケーションは親にとって最も馴染みがあり心を伝えられる言葉で行われるべきなのです。
私自身、アメリカで子育てをしていて、子どもが2つの言語をバランスよく獲得していくことの難しさを日々実感しています。
地域にとけこみ、地域の人たちとの関わりが増せば増すほど、強い信念がなければ母語での育児は難しくなります。
しかし、子どもの豊かな言語発達のため、また、子どもの2つの言語を獲得する可能性を最大限に伸ばしてあげるため、みなさんの母語での親子コミュニケーションを応援したいと思います!