自分の気持ち、そして周囲の人の気持ちを理解し表現する力は、とても重要なソーシャルスキルです。
例えば、以下のようなシーンを想像してみましょう。
A君はとても元気な7歳の男の子です。
学校が終わるといつも元気に「ただいまー!」と言いながら玄関のドアを開けて帰ってきます。そしてすぐにキッチンにいるお母さんの元に行き、学校であったことを報告します。
でも今日はいつもと様子が違いました。
玄関のドアを開け、小さな声で「ただいまー」と言って中に入ってきましたが、そのまま何も言わず、ソファーに座って下を向いています。
さて、みなさんは、A君の気持ちを想像できましたでしょうか。
A君の表情や動作、声のトーンから何がわかるでしょうか。
表情:いつもは笑顔で帰宅するのに、今日は下を向いている。
動作:いつもは元気に玄関のドアを開けて帰ってきて、すぐにお母さんのところに行き、学校であったことを報告するが、今日は、家の中に入ったあと、何も言わずにソソファーに座っている。
声のトーン:いつもは元気の良い声で「ただいまー」と言うが、今日は小さな声で「ただいまー」と言った。
これらの手がかりをもとに、A君は気持ちは「悲しい」気持ち、あるいは「落ち込んでいる」であろうと想像できます。
A君の気持ちを理解することができると、「どうしたの?」「何か嫌なことがあったの?」とA君の気持ちに寄り添う対応ができ、A君が元気になるように励ますこともできます。
もし、A君のサインに気づかずA君の気持ちを理解できなかったらどうなるでしょうか。
おそらく、A君の気持ちに寄り添ったり励ましたりすることができず、A君は悲しい気持ちのまま次の日を迎えてしまうかもしれません。
そして、もし、A君自身が自分の気持ちを表現することができなかったらどうなるでしょうか。
ネガティブな気持ちになっているという自分の状態やその理由を特定したり解決方法を考えることができず、「やる気がなくなる」「乱暴になる」等の行動でその状態を表現することになり、それにより「やる気がない」「乱暴な子」という印象を与えることにより、周囲の人との間で誤解を生んでしまうかもしれません。
このように見ていくと、自分と周囲の人の気持を理解することはとても重要なスキルであることがわかります。
すなわち、自分の気持ちを理解し表現する力をつけることにより、自分の気持ちや行動をコントロールすることができるようになります。
また、周囲の人の気持ちを理解することで、円滑なコミュニケーションを図ることができるのです。
お子さんが気持ちを理解し表現できるように、周囲の大人はどうしたらよいでしょうか。
例えば・・・
1. 周囲の大人が気持ちを言語化し、その気持ちの理由を説明してあげる。
「お父さん、今日、電車に乗り遅れちゃったんだよ。早く帰って○○ちゃんに会いたかったから、すごくくやしくて、こんな顔になっちゃったよ。」
「あら、○○くん、お部屋をきれいに片付けられたね。お母さん、とってもうれしい!」
2. また、絵本やテレビを見ながら、登場人物の気持ちについてお話する。
「言わなくてもわかる」ではなく、「わかるようにように伝える」ことで、お子さんが気持ちを理解し表現できるように促してあげましょう。