日米でスピーチセラピーに携わってきた、というお話を前回いたしましたが、アメリカに来てから新しく学んだ分野がいくつかあります。
その中のひとつが「ソーシャルスキル」に関するセラピーです。
今日は、その「ソーシャルスキル」をご紹介したいと思います。
「ソーシャルスキル」とは、一言でいうと、人とのかかわりの中で必要なコミュニケーション力のことをいいます。
そこには、言語性コミュニケーションと非言語性コミュニケーションが含まれます。
言語性コミュニケーションとは、ことばを使ったコミュニケーション。
非言語性コミュニケーションとはことば以外の手段を使ったコミュニケーション。
すなわち、顔の表情や視線、声のトーン、身振り、姿勢などなどが含まれます。
これらの言語性・非言語性コミュニケーションの全てを上手に使えない場合、人とうまく関わることができません。
そういった問題を改善する目的のセラピーが「ソーシャルスキル」セラピーです。
このセラピーはグループで行われることが多いため、「ソーシャルスキルグループ」と呼ばれることもあります。
毎回、テーマを絞ってそのテーマに基づくアクティビティーを行います。
例えば、「会話のやりとり」がテーマの場合のアクティビティーをご紹介します。
テーマ:会話のやりとり(turn-taking)
目標:会話のやりとりにおける「良い」行動と「悪い」行動を理解する。
道具:棒 方法:あるテーマ(例えば、「夏休みにしたいこと」)にもとづいて、グループで会話をする。
ルール:『棒』を持っている人のみが話すことができる。
自分が話し終わったら、グループ内の他の人に『棒』を渡す。
『棒』を受け取った人は、引き続きテーマに沿って発言する。
ここで、『棒』を使うわけは、会話のやりとりを視覚的に行うことにあります。
会話を独占してしまう子、会話に参加しない子、など会話力に問題のあるお子さんは、それを意識していない場合が多くあります。
棒を持つことで、自分が話している時間・話す順番であること・話す順番を待つこと(棒を受け取るまで待つ)を視覚的に意識することができます。
上記のアクティビティーはほんの一例です。
ソーシャルスキルグループのポイントは、参加者が楽しめるようなアクティビティーを行いながら、本人たちがそのアクティビティーの目的をしっかりと理解することです。
そのためにも、セラピスト自身が目的を明確にし、かつ楽しむことが大事だと思います。
課題はどれだけ持ち札を増やせるか・・・。
「これ、前にもやったじゃん」って子どもたちに指摘されちゃいますので(笑)。