オンラインスピーチセラピーの紹介とプライバシー保護について

オンラインスピーチセラピー

新型コロナウイルスの感染拡大防止により、日本だけでなく、全米、そして世界中で学校やクリニックの閉鎖が行われ、その期間も長期にわたる地域が出てきています。 人との接触を控える必要がある今こそ、子どもたちの学習や療育など、子どもたちが必要なサービスを確実に受け続けることができるシステムを作っていく必要があります。 そんな中、アメリカでは、オンラインでスピーチセラピーを提供するスピーチパソロジストの数が急増しています。 今回、以前から携わっていたオンラインスピーチセラピーについて、より多くの方に知っていただきたいという思いから、オンラインスピーチセラピーの紹介動画を作成いたしました。 オンラインスピーチセラピーに必要なもの オンラインスピーチセラピーを受けるにあたりー ・ネット回線に繋がっているコンピューターまたはタブレット ・ウェブカメラ(コンピューターまたはタブレットに搭載されていない場合) ・スピーカー&マイク(コンピューターまたはタブレットに搭載されていない場合) ーが必要になります。 プラットフォーム オンラインスピーチセラピーは、ビデオ会議用のプラットフォームを使って実施します。 世の中には、様々なプラットフォームがありますが、セラピストは、対面のセラピー同様、ご利用いただくお子さんおよびご家族のプライバシー情報が漏洩してしまうことのないよう、セキュリティ性の高いプラットフォームを選ぶ必要があります。 例えばアメリカの場合、健康情報に関するプライバシールールおよびにセキュリティルールに関するHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療保険の携行性と責任に関する法律)に準拠したプラットフォームの使用が義務付けられています。 日本ではもちろん、日本の法規制に沿ったものが必要ではありますが、利用者の個人情報の保護を念頭に置いたプラットフォーム選びが必須であることに変わりはありません。例えば、一般に広く使われているSkypeやLineのビデオ通話、facetimeなどの無料のビデオ通話プログラムには、クライアントのプライバシーを保護するための機能が備わっていません。 ちなみに、上述のHIPAA準拠のプログラムの例としては、GoToMeeting、Theraplatform、そしてHIPAA準拠版のZoomがあり、日本でも、オンラインスピーチセラピーを行う場合は、それに準じたセキュリティ機能を備えたプラットフォームを選ぶことが望ましいでしょう。 日本でも、テレワークを推進する動きがあり、医療や療育、育児支援の分野でも、オンラインでのサービス提供が増えてくるかもしれません。 言語聴覚療法だけに限らず、医療や療育、育児支援関係者は、利用者のプライバシー保護に特に配慮することが必要です。そのうえで、テクノロジーを利用したオンラインサービスが普及することにより、休園・休校が続くこの時期においても、子どもたちの療育や学習が滞ることなくすすめられていくことを願っています。 (追記 2020年3月22日)新型コロナウィルスの感染拡大防止策の一環として、現況、オンラインによる医療サービスの普及が必須であり、それにより、医療サービスを提供する際に使用するプラットフォームを含めたHIPAAの規制緩和が発表されました。 詳しくは、こちらをご覧ください。 https://www.hhs.gov/sites/default/files/hipaa-and-covid-19-limited-hipaa-waiver-bulletin-508.pdf https://www.cmadocs.org/newsroom/news/view/Articleld/48761/President-suspends-HIPAA-penalties-to-facilitate-telehealth-effective-immediately

ソーシャルストーリー『しんがたコロナウィルス』

ソーシャルストーリー『しんがたコロナウィルス』

新型コロナウイルスの感染拡大により、子どもたちの通う学校や園は休校・休園となり、子どもたちの生活・精神面に大きな影響が出てきています。   コロナウィルスっていったい何者なの? ぼくたち・わたしたちのせいかつはどうなっているの? ぼくたち・わたしたちができることはなんなのだろう?   ーといったことを、子どもたちが理解できることばで説明し、子どもたちの不安や混乱を軽減してあげることができればーという思いで、ソーシャルストーリー『しんがたコロナウィルス』を作成いたしました。 幼いお子さんがいらっしゃるご家族、言語発達に躓きのあるお子さんがいらっしゃるご家族、発達支援に携わっていらっしゃる方々など、できるだけ多くの方にご利用いただきたいと思い、こちらで無料ダウンロードできるようにいたしました。 こちらのアイコンをクリックすると、ファイルをダウンロードできます。 あとがきにも記載しておりますが、このソーシャルストーリーを作成した目的は、子どもたちが情報を正しく理解することにあるため、ストーリーに含めた情報は最小限にとどめています。   より正確な情報が必要な場合、以下のサイトをご参照いただきますよう、よろしくお願いいたします。 厚生労働省『新型コロナウィルス感染症について』     また、このソーシャルストーリー作成にあたり、以下の小学生向け解説資料も参考にいたしました。 藤田医科大学医学部 感染症科監修 『コロナウイルスってなんだろう?』   新型コロナウィルスにまつわる事態が一日も早く収束し、通常の生活が戻ってくることを願ってやみません。

オンラインスピーチセラピー

オンラインスピーチセラピー

「こんにちはー!」という元気なあいさつで始まるオンラインスピーチセラピー。 日本中、世界中、どこにいても、お子さんとセラピストがリアルタイムでつながり、楽しいセラピーの時間が始まります。 対面で行うセラピーと同等のセラピー効果があると実証されているオンラインスピーチセラピーですが、今日は、『お子さんの言語発達のために、なぜ&どのように、オンラインスピーチセラピーが効果的なのか?』という疑問にお答えします。 生活空間の中のセラピー お子さんの言語発達には、親御さんの関与が必須です。 実際、1週間に数時間のみの療育で効果を上げることは非常に困難で、生活の中にスピーチセラピーを含め療育の課題を取り組むことで、その効果を最大限にあげることができることが実証されています。 具体的な例で考えてみましょう。 例えば、サッカーを習得しようとしているお子さんがいるとします。このお子さんが、サッカーが上手になるためには、どうしたらよいでしょうか。 家や学校で、サッカーについて勉強をしたり、サッカーの動画を見てボールを蹴る練習をしたら、上手になるでしょうか? それとも、チームメンバーと一緒にサッカーフィールドで練習した方が良いでしょうか。 答えは当然、後者です。 なぜでしょうか?それは、サッカーを習得するのであれば、サッカーを実際にプレイする空間で練習することが、もっとも効果的だということなのです。 言語発達も同じです。 お子さんが実際に言葉を使ってコミュニケーションをとっている「家庭」という生活空間の中で言葉を学ぶことで、それがすぐに生活の中に溶け込んでいきます。 それは、親御さんにとっても同じです。お子さんとご家族が生活する「家庭」という生活空間の中で、お子さんと一緒にオンラインスピーチセラピーに参加し、言語発達を促すセラピーを受け、それをその生活空間の中ですぐに実践することができます。 それを可能にするのが、オンラインスピーチセラピーなのです。 私がオンラインスピーチセラピーに携わるようになったのが今から8年ほど前。 テクノロジーの発展で、ますます利用しやすく楽しく使えるツールが開発されています。 パソコンだけでなく、タブレットでもセラピーを受けることができます。 日本ではアメリカほど普及していないオンラインスピーチセラピーですが、その便利さとレッスン効果を多くの方にぜひ体験していただきたいと思っています。 接続環境の確認も含めた体験レッスンを無料でご提供しております。 お問い合わせフォームをご利用いただくかお電話にて、ぜひお気軽にご連絡ください。

「形の似ているひらがな」ワークブック

形の似ているひらがな

ひらがな練習ワーク 濁音&半濁音・拗音・促音・長音編を作成&出版したのが、1年半ほど前… 今回、「ね」と「れ」、「さ」と「き」、「つ」と「う」など、読み間違い&書き間違いの多い平仮名にターゲットを絞った教材を作成しました。 全部で、「選択(単音)」「選択(単語)」「書き取り練習」の3部構成になっていて、それぞれの課題の最初に使い方だけでなく、課題の目的を表記しています。 例えば、「選択(単音)」では、 形の似ている文字の違いを認識できるようになる。 音と文字をマッチングできるようになる。 という2つの目的を達成できる内容になっています。 ーということで、各課題の例をご紹介します! 単音 単語(たんご) 書き取り 「形のにているひらがな」ワークブックは、Suzuki Speech Roomの TpTストアで購入できます。 教材や購入方法に関するご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問合せください♪

今週の絵本 第26弾「ここにいたいあっちへいきたい―にひきののみのはなし」

「ここにいたいあっちへいきたい―にひきののみのはなし」著:レオ・レオニ翻訳:谷川俊太郎出版: 好学社 今週の絵本第26弾「ここにいたいあっちへいきたい―にひきののみのはなし」をご紹介します。 予備知識として・・・ このお話を理解するためには、まず、最後まで姿を現さない主人公が「ノミ」であることを理解することがキーとなります。 そのためにも、まず「ノミ」についての理解を確認します。 お話の設定  そして、お話の理解 おはなししているのはだれ? ノミは、どこにいった? などの質問に答えながら、主人公と場面の入れ替わりを理解します。 他者の考えと自分の考えの理解 と想像する力 2匹のノミの考え方や行動の違いから、人はそれぞれ考え方や気持ちが異なるということを理解します。 その上で、「もしも〇〇君/ちゃんだったら・・・」という仮定のことを想像して考える練習をします。   新型コロナウィルス対策で、外出や行動の制限があることで、お子さんも親御さんもストレスが多いことだと思います。在宅の時間が長らくなると、ついついテレビやゲームの時間も長くなりがち・・・ 気分転換に、絵本や工作、お料理などなど、親子の楽しい時間を増やすことで、ストレス軽減&言語発達を促すアクティビティができたらいいですね!

今週の絵本 第25弾「ろくべえ まってろよ」から学ぶ問題の解決方法

ろくべえ まってろよ

「ろくべえ まってろよ」著:灰谷 健次郎イラスト:長 新太出版: 文研出版 久しぶりの「今週の絵本」シリーズになります。 今週の絵本第25弾では、「ろくべえ まってろよ」をもとに、問題解決方法について学ぶアクティビティをご紹介します。 お話の設定 物語の理解では、まず「お話の設定」を理解することが重要です。 このお話は、穴に落ちているろくべえをえいじくんが見つけ、こどもたちが心配そうに穴を覗くシーンから始まります。 お話の中での問題解決の理解  お話の中で、子どもたちは、ろくべいを助けようと懸命に考えます。 「ろくべえが穴に落ちた」という問題に対して、子どもたちが考えた解決方法、その結果を整理して考えます。 生活の中で起こりうる問題の解決方法 問題解決の仕組みについて理解できたところで、生活の中で起こりうる問題と、その解決方法について考える練習をします。 ぶらんこの順番を待っていました。順番になり、ぶらんこにのろうとしたところ、別の子が走ってきて、ぶらんこにのってしまいました。どうしたらいいでしょうか。 ある日、お兄ちゃんのシャーペンを勝手に使っていたところ、シャーペンが壊れてしまいました。どうしたらいいでしょうか。 騒いでいる子がいて、先生の説明が聞こえません。どうしたらいいでしょうか。 「ろくべえ まってろよ」の中で、子どもたちが試行錯誤する様子を振り返りながら、問題が解決する方法に到達する前に、失敗があってもよいこと、大人に助けを求めてもよいこと(物語の中では、大人は助けてくれませんが・・・)、答えはひとつとは限らないことなども伝え、お子さん自身が答えを導き出せるよう、サポートします。 子どもたちは、成長の過程で多くの問題に遭遇します。子ども自身が問題を解決していく力をつけていけるよう、支援していきたいですね。

せいようフェスティバル

せいようフェスティバル

先日行われた、MEDINT・CHARM主催シンポジウムを聴きに来てくださっていた青陽東養護学校の言語聴覚士 石田先生からご招待いただき、去る2月8日、青陽東養護学校の文化祭「せいようフェスティバル」に行ってきました。 青陽東養護学校は、JR灘駅から徒歩5分のところにあり、小学部・中学部・高等部あわせて、約200人の児童生徒の皆さんが通われています。 校門に近づくと、児童生徒や教職員の方々、保護者、来賓の方々の楽しそうな声が聞こえてきました。 石田先生に校内を案内していただきながら、児童生徒の皆さんの作品の展示や作業学習で作った野菜や商品の販売、体育館で行われていたステージを満喫しました。 アメリカでは、IDEA (The Individuals with Disabilities Education Act) のもと、すべての公立校に、スピーチパソロジストをはじめ様々なスペシャリストが配属され、個々のお子さんに必要な支援が無料で提供されています。 日本に帰国以来、日本の文化やシステムに合う形で、スペシャリストと先生方がチームとなって、子どもたちが多くの時間を過ごす学校で、個々の子どものニーズに合った支援が行われていくようになればいいのにーと感じ、そのためにも、学校現場の様子を学びたいと考えていました。 そして今回、養護学校で勤務されている石田先生との出会いがあり、学校を訪問させていただくことができました。 児童生徒の皆さんのイキイキした様子を拝見することができたことはもちろんですが、児童生徒一人ひとりのことを理解し、その子どもたちのために、先生方との連携と絆、そして地域の人々との関係を築いていかれている石田先生の行動力と努力に感動しながら、学校をあとにしました。 さいごに・・・ せいようフェスティバルで購入した作品をご紹介します。自宅&オフィスで愛用させていただきます! 動物のお皿 カプラ・クリップ・ヘアピン ストラップとしおり

ソーシャルフィルター

Think It or Say It

声に出して言ってもよい言葉と、声に出して言ってしまうと誰かを気づけてしまったり嫌な気持ちにさせてしまう言葉があります。 そういった「言うべき」か「言わざるべき」かを選択することを『ソーシャルフィルター』といい、スムーズな人間関係を築いていくためには重要なソーシャルスキルです。 今日は、ソーシャルスキルカリキュラムである Everyday Speech の中の “Think It or Say It” そして “White Lie” をもとに考案した、ソーシャルフィルターを理解するためのアクティビティをご紹介します。 Think It or Say It? ~こころのなかで vs. こえにだして 家族で友人宅に遊びに行き、友人が作ってくれた食事を口にした子どもが一言… 「これ、おいしくなーい!」 一瞬、場面が凍り付く様子が想像できます。   家庭内での食事場面では許される言動が、他の場面では好まれないことがあります。 このように、状況に応じて「声に出して言っても良い言葉」「心の中で言う(声に出して言わない)言葉」を理解するためのアクティビティがこちらです。 『Think It(こころのなかで) vs. Say It(こえにだして)』 紙に書かれた言葉を見て、その言葉を言う、あるいは聞く場面を想像します。そして、それが、声に出して言っても良い言葉かどうかを考えます。   本当の気持ち vs. 声に出して言う言葉 続いて、本当の気持ちと、誰かを傷つけたり嫌な気持ちにさせないよう、正直な気持ちをそのまま声に出して言うのではなく、別の表現を考える練習をします。 例① 誕生日プレゼントにはレゴセットが欲しいと思っていたケン君。おじいちゃん・おばあちゃんが用意したプレゼントは、色鉛筆。プレゼントの箱を開けてがっかりしたケン君。おじいちゃんとおばあちゃんの気持ちをかんがえると、何といえばよいでしょうか。 例② 最近、視力がおちてきたミキちゃん。ある日、眼鏡をかけてきました。眼鏡をかけたミキちゃんも見て、違和感を感じたアキト君。みんなに何と言われるのか心配しているミキちゃんの気持ちを考えると、何といえばよいでしょうか。 例③ 仲良しのお友だち4人で映画に行こうという話がでました。でも、アキラ君、3人が行きたいと言っている映画は、正直面白くないと思っています。でも、お友だちの気持ちを考えると、「面白くないから行かない!」と言う代わりに、何といえばよいでしょうか。 White Lies vs. Black Lies  ~ついてもいいウソ vs. ついたらいけないウソ そして、ついてもいいウソとついたらいけないウソの違い、それぞれのウソが相手に与える影響について、考えます。 […]

ゲストティーチャー&シンポジスト

シンポジウム質疑応答

12月に地域の小学校の「キャリア教育」の「ゲストティーチャー」として、1月に医療通訳研究会(MEDINT)・CHARM母子保健登録通訳者フォローアップ研修のシンポジストとして、お話する機会がありました。今日は、その報告をしたいと思います。 ゲストティーチャー 12月17日、地域の小学校にゲストティーチャーとしてご招待いただき、6年生の児童の皆さんに言語聴覚士についてお話しました。 自己紹介のあと 「言語聴覚士という仕事を知っている人?あるいは、聞いたことがある人?」と聞いてみました。 挙手は… 0(ゼロ)! そこから、 言語聴覚士の仕事内容や勤務する場所、関連業種などをご紹介し、言語聴覚士になる方法についてお話しました。 今回は、「言語聴覚士」という仕事に興味を持ってもらう事はもちろんなのですが、子どもたちが言葉やコミュニケーションに不自由のある方々への理解を深めるきっかけになったらーという願いもありました。 ですから、私自身が言語聴覚士として心がけていることや「言語聴覚士になってよかった!」と思った経験についてもお話し、体験を通して、言葉やコミュニケーションに不自由のある方々をサポートするコツも感じてもらう時間をもちました。 それから約1週間後、児童の皆さんの感想や感謝の気持ちがぎっしり詰まった、素敵なプレゼントをいただきました。その一部をご紹介したいと思います。 ぼくは、鈴木さんの話を聞くまで言語聴覚士という仕事を知らなかったけど、話を聞くうちに楽しそうな仕事だなぁと思いました。人々のために働く仕事もいいなぁと思いました。 私は言語聴覚士という仕事を知りませんでした。ですが、今回お話を聞いて、人のためになる職業なんだなぁと感じました。私も大きくなったら、人のためになる職業につきたいと思いました。お話をしてくださり、ありがとうございました。 色々なお話をしていただきありがとうございました。言語聴覚士という仕事は聞いたことがなかったけれど、今回お話していただいて、知れてよかったです。これからは、周りの方の気持ちも理解して接していきたいと思いました。 言語聴覚士のお仕事は、初めて聞いて、なにかよくわかりませんでした。でも、わかりやすいお話をきいて、人の役に立つことはとても良いことだと思いました。私は、このお話を聞いて、人の役に立つ仕事につきたいです。 児童の皆さん一人ひとりからのお手紙を読み、 「言語聴覚士という仕事を知ってもらいたい」 「言語やコミュニケーションに不自由がある方々への理解を深めるきっかけにしてもらいたい」 という目標を達成できた!と実感することができ、ゲストティーチャーをお引き受けしてよかった!と思いました。 MEDINT・CHARM主催シンポジウム そして1月12日、医療通訳研究会(MEDINT)・CHARM母子保健登録通訳者フォローアップ研修のシンポジストとしてご招待いただきました。 「就学前の子供たちの言語発達を考える~言語聴覚士の立場から」というテーマで、私からは、バイリンガル児の言語発達支援(マジョリティ言語を母語としない親をもつ子どもの言語発達支援)についてお話いたしました。 バイリンガル児の言語発達に関する基本情報から始まり、バイリンガル児の言語評価と過剰診断/過小診断といった誤診について、母語育児が推奨されるべき理由、そして通訳者との連携について話を進めていきました。 もう一人のシンポジストである、手話通訳士兼言語聴覚士の上田月美さんや、当事者の桃山学院教育大学教育学部教育学科講師オチャンテ 村井 ロサ メルセデスさんからもお話を伺い、3人の話のあと、シンポジストが参加者からいただいたご質問に答える時間もありました。 このシンポジウムには、通訳者の方々だけでなく、言語聴覚士や教育関係者など、多くの方々が参加してくださり、とても有意義で学びの多い時間となりました。 12月・1月と、通常の臨床とは異なる経験をさせていただきました。 ゲストティーチャーとして児童の皆さんや先生方との心の触れ合いがあり、シンポジストとして、関連業種の方々との輪の広がりがあり、とても貴重な体験をさせていただきました。 この経験を、これからの仕事に生かせていきたいと思います。

SMART Goalを使った目標設定ー実践編

目標

前回、SMART Goalに基づいた目標設定について、お話しました。 今日は、SMART Goalを使った目標設定ー実践編として、低学年のお子さんと高学年のお子さんの例を挙げて具体的に見ていきたいと思います。 まず、簡単に、SMART GOALの意味を復習しましょう。 SMART GOALとは、 S: Specific 具体的に M: Measurable 測定可能 A: Achievable 達成可能 R: Realistic 現実的な T: Timed 期限 という要素を含んだ目標設定です。 では、低学年のお子さんの例を見てみましょう。 S:「算数をがんばる」ではなく、具体的に「九九」と設定。 M:「九九の1の段から5の段まで間違わずに言える」というのように、間違える回数を「ゼロ」にすることを目標にすることで、測定可能な目標に設定。 A:「1の段から5の段まで」とすることで、実際に達成可能な目標にする。 R:実際に算数の授業で取り組んでいる「九九」を目標にすることで、現実的な目標に設定。 T:「12月31日まで」と期限を設定。 そして、高学年のお子さんの例です。 まず、「得意なこと」「苦手なこと」を考えることで、自分自身を理解することから始めます。 次に「苦手なこと」から「上手になりたいこと」を考えます。 そして、SMART GOALに基づき、「上手になるためにすること」を考えます。 S:「漢字を覚える」ではなく、「次の漢字テストで100点」というように、具体的な目標を設定。 M:「100点」という数字を使うことで、測定可能に。 A:現在の点数が80~90点の場合、「100点」という点数は達成可能な点数になります。現在の点数が40~50点であれば、「60点」や「70点」と設定するのが、達成可能な点数になるでしょう。 R:毎週行われている漢字テストを目標に設定することで、生活に基づく実際的な目標になります。 T:「次の漢字テスト」と設定することで、期限を決めることができます。 高学年の例で、「もし、うまくいかなかったら、どうする?」という質問に答える項目をつくっています。 これは、軌道修正の方法があるということを学んでほしいという目的があります。 目標を設定して、その目標達成のための方法を考え、実行することは素晴らしいことです。でも、1つの方法がいつもうまくいくとは限らない。うまくいかない場合は、別の方法を試してみればよい。大人の意見を参考にすることも大切なことであることを感じてもらうことで、壁に直面した場合の問題解決能力を培うことにつながります。 そして別の視点になりますが、目標設定をするうえで忘れてはならないことがあります。 それは、短期目標&長期目標という視点です。 目標設定するうえで、短期目標の積み重ねの延長線上に長期目標があるということをお子さんが理解することがとても大切です。 途中、道路が滑ってしまったり、急な傾斜があったり、赤信号があったり・・・トラブルに遭うかもしれないけれど、延長線上には、必ずゴールがあるのだということをイメージして、今日達成すること・1か月後に達成すること・3か月後に達成すること・・・将来達成したいことを考えるのをサポートします。 以上、SMART Goalを使った目標設定ー実践編を、低学年と高学年のお子さんの例を挙げてご紹介いたしました。 お子さんの発達年齢にあった目標設定をサポートする際に参考にしていただければ幸いです。